中古住宅の「現況有姿売買」において、シロアリ被害が隠れた瑕疵と認められ、売主業者の責任が肯定された事例(東京地判 平成18年1月20日)
リフォーム済みの築21年の中古住宅を、不動産業者(売主)から「現況有姿(現状のまま引き渡す条件)」で購入しました。しかし、引渡し直後に床下を確認したところ、土台がシロアリに食い荒らされているのを発見しました。
売主や仲介業者は「知らなかった」「現況有姿の契約だから責任は負わない」と言っていますが、修補費用や仮住まいの費用などを損害賠償として請求することはできるのでしょうか?
売主に対して、瑕疵担保責任(現在の契約不適合責任)に基づく損害賠償請求が可能です。
裁判所は、たとえ築21年の中古物件であり「現況有姿売買」の合意があったとしても、買主が通常の注意で発見できないシロアリ被害は「隠れた瑕疵」に該当すると判断し、売主業者に修補費用等の支払いを命じました。ただし、被害を本当に知らなかった仲介業者への責任(不法行為等)は否定されました。
⚖️ 実際の判例・根拠法規
東京地判 平成18年1月20日判タ1240-284「隠れた瑕疵」の該当性と現況有姿特約:
契約時すでに建物の土台がシロアリに侵食され、構造耐力上の危険性(欠陥)を有していた。本件は築21年の中古建物で「現況有姿売買」とされていたが、床に塩化ビニール材が張られ買主が欠陥を認識することは困難であったことから、「隠れたる瑕疵」にあたると認定。売主である不動産業者の瑕疵担保責任が認められた。
・損害賠償の範囲:
補修費(500万円)に加え、工事期間中の引越費用や家賃等(218万円)を含む計718万円が損害として認容された。
・仲介業者・代理業者の責任:
代理業者や媒介(仲介)業者については、リフォーム後の立ち入りであったことや、シロアリ被害について特別な知識があったとは言えないことから「欠陥を認識しておらず、過失により認識しなかったともいえない」として、説明義務違反や不法行為責任は棄却された。
💡 建築士・実務専門家の見解
「現況有姿(現状のまま)」という特約があっても、シロアリによる土台の侵食という重大な欠陥から売主(特に宅建業者)は逃れられないことを示した、買主にとって心強い判例です。
不動産取引において、業者はしばしば「リフォーム済みで綺麗です」「古い家なので現況有姿で」と説明しますが、床下など一般の買主が見えない部分のシロアリ被害は「隠れた瑕疵」として強力に保護され、修補費用だけでなく工事中の仮住まい費用まで請求できる可能性があります。
一方で、仲介業者の責任は「知っていたか、知るべきだったか」で判断されるため、故意や重過失がない限り責任追及は難しく、ターゲットは「売主」に絞るのが実務上の定石です。中古住宅を購入する際は、綺麗な内装や「現況有姿」の言葉に丸め込まれず、契約前に専門家による床下インスペクション(建物状況調査)を入れることが最大の防衛策となります。